※In Style Beauty に2014年に掲載された「徳永優子のHollywood舞台裏情報」連載コラムです。
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前回のインタビューで少しお話しました「アメリカンミュージックアワード2013」の舞台裏について、お話しようと思います。
リハーサルが始まる前の緊張感は忘れられません。ハリウッドのリハーサルでは通常、ヘアメイクの見栄えが良くなかったり、企画とイメージが合わないと、リハ終了後、演出家やプロデュースデザイナーなどの企画関係者からメモが届くことがあります。それは、変更点を書いたものであったり、こうして欲しいという要望です。この時もそんなドキドキ感とこれから始まるワクワク感の中で、リハーサルを行っていました。
希望するデザインを使ってもらえるか土壇場までわからないというのが、ハリウッドでは当たり前のこと。自分達の思い描くテーマなどもあり、本番はできれば希望するデザインでいきたいのですが、メモが届くと修正をしていかなければいけないので、シンプル化したデザインもあらかじめバックアップとして準備しています。
「アメリカンミュージックアワード2013」では、ダンサー達がバックステージからステージに上がる度に観客から歓声が上がり、プロダクション関係者たちは興奮気味でした。私達クルーが創作の時間に追われる中、楽屋では日本人の真似をして“ピース”でコダックタイム※を楽しんでいました。
※コダックタイム・・・写真を撮るのにふさわしいハイライトシーンがあるときに、“コダックタイム”と声をかけるとみんなカメラに意識をかたむけます。
ダンサー達は、自分がバックで踊るスターの名前が書かれたところでメイクや衣装をチェンジします。ケイティ・ペリーなどスター達はステージ地下に部屋があり、表には各スター達の長い大きなトレーラーが並びます。
今回のステージでは、アメリカ人の衣装デザイナーから「ヘア飾りに使ってくださいね!」とたくさんのアクセサリーをいただきました。プロダクション側からも、「どうぞ遠慮なく好きに使ってほしい」とのお言葉をいただきました。バックステージに届いたアクセサリーを見てみると、ハイビスカスの花や簡素な割り箸やお寿司に飾るような傘などでした。
私が準備し使おうとしていたものは、京都で修行をしていたころに師匠から頂いた本物の頭飾品。私としては、そういった“ホンモノ”を使いたいと思っていましたが、現場ではその価値を伝える時間的余裕もなく、お断りできない立場でもあったのでジレンマを感じました。それでも目立つ部分にはホンモノを使いたいので、ヘアスタイリスト達には、いただいたアクセサリーをやたら使わないよう指示し、いただいたものを使う場合には隠しながら使用し、創り上げました。
文化の違いを目の当たりにし、意識の相違や伝えることの難しさを痛切に感じました。そんな誰にも言えない悩みもありましたが、無事に「アメリカンミュージックアワード2013」のステージを成功に導くことができました。
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